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『フロスト×ニクソン』 (2009) [映画 (2009 鑑賞作品)]

 アカデミー賞主要5部門ノミネート。この作品の「売り」は、こんなところなのかなあ~。

 とりあえず、この5部門は一つも取れなかったのですが、それはなんとなく理解できます。決して悪くはないし、面白い映画です。でも、舞台の映画化なんですよね。主演の二人も、舞台のキャストそのままです。

 特に、ニクソンを演じたフランク・ランジェラの演技は、唸らされます。でも、舞台でも既に評価されているでしょうし、今更アカデミー賞でもないでしょ、ということなんだろうなあ。

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 この作品は、米国大統領としては、歴史に残る辞任劇を演じた、あのウォーター・ゲート事件のニクソン元大統領と、イギリスの人気テレビ番組司会者デビット・フロストとのインタヴューを、いわばドキュメンタリー・タッチで描いた映画です。

 当時の映像もふんだんに取り込まれているし、両者のブレーンを含めた、下準備から始まって、本番での丁々発止の駆け引きなどが、息もつかせぬ緊迫感で描かれていきます。

 インタヴューを通して、ニクソンの心が崩れてゆくさまは、やっぱり人間なんだな、なんて思ってしまうけれど、人間なんて強くて弱いもの、でも、米国の大統領たる人が、どこかで足を踏み外して、間違った方向に進んで行ってしまった、ってのは、いくらなんでも、キツいです。

 大統領なんですから、どこまでも、人間として正しく、なおかつ、人間として強くあって欲しいと思ってしまいます。

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 ニクソンとフロストのインタヴューが、一種の決闘のように描かれていきます。しかし、この決闘の主役は、つまるところニクソン対アメリカ国民なんですね。

 確かに映画的に面白くするために、アメリカ国民の代表でもあるような位置で、フロストはインタヴューを続けるのですが、何故かフロストは人には好かれるけれど、女好きで軽薄っぽく、描かれています。実は・・・、みたいな部分も描かれるんですが、余り好意的な描写とは思えません。

 この作品では、必要以上に、その部分を強調しているみたいですが、このインタヴュアーをヒーローとして描きたくなかった・・、なんとなく、監督の心情が窺えます。

 どちらにしても、フロストはイギリスの芸能人、だからこそ、ニクソンの気も緩んだのかもしれません。たかが、どこの馬の骨ともわからない、イギリスの司会者に、屈するわけはないだろう、そんな思いあがりともとれる心理が、そこにあったかもしれません。

 その過程を、事実の描写に頼らず、ニクソンの心情を吐露する形で描いている部分は、大変興味深く思えました。

 大統領もただの人、コンプレックスやトラウマや、いろいろあるんだよねえ・・・、なんて、しんみり同情してしまう・・・。

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 でも、この人のせいで、どれだけ多くの人の命が戦争で奪われたか・・・、それも結果的には「意味もなく」なんだから、「やっぱり、普通の人じゃん」では済まされない事実が、そこには存在しています。

 結局、日本人の私の目から見たら、そんなレベルでしか、解釈できない映画なのかもしれないけれど・・・。

 そう、この作品でのニクソンは、とても人間的な弱さを見せてくれるんです。

 しかし、強い国の、強いはずの大統領が、ホントはこんな人間的な弱さも持っていた、それは、きっと国民にとって、受け入れることの出来ない衝撃的な事実だったのでしょう。だからこそ、このインタヴューは衝撃的なんだと思います。

 元大統領が、自らの過ちを後悔する事。それは、命を落とし、人生を奪われた肉親を持つ、アメリカの多くの国民にとって、どんな意味があるのか、ニクソンの謝罪を要求しながらも、受け入れがたい現実をも、認めなければならない悔しさと憤りと落胆。

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 どちらにしても、このインタヴューに、真の勝者はいないように思えました。

 インタヴュアーのジャック・フロストが勝者という意見もあるかもしれません。

 しかし、この人はいわば審判のようなもの。大統領と国民の戦いに、白黒付けた、カヤの外の人。この人がのちに、イギリス女王から、Sirという称号を得ても、アメリカ国民には結局、関係ないことのように思えます。

 そんな風に、私は思ってしまいます。インタヴュー後のエピソードとして、フロストがニクソンにプレゼントを渡すシーンがあります。とても心温まる、きっと素敵なエピソードとして、受け止められる雰囲気の描き方なんですが・・、やはり、私は、そこに、ニクソンを「ただの人」として捉えた監督の冷ややかな視線を感じてしまいました。

 そう、この作品での監督の目は、冷静で冷徹。「ただの人」として、ニクソンを描きたかった、フロストに対しても同じだと思います。

 そう、「ただの人」が国を動かしている、それを認識しなきゃ・・・、監督はそう言いたかったように思えました。

 追記: 私のこの作品に対する感想は、C,S,N&Y の「オハイオ/Ohio」に限りなく影響されているように思います。参考までに、この記事の最下部に、YouTube にあった動画を貼り付けておきます。音楽って、やっぱり、影響力は大きいですね。

《 転載 2009-06-09 16:23:26 》


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