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『南極料理人』 (2009) [映画 (2009 鑑賞作品)]

南極料理人.jpg

 観た直後は、軽い喜劇、美味しそうな料理がいっぱい出てきて、見ているだけで嬉しく楽しくなる作品。そんな印象でした。

 ちょっと時間が経って、今思い返すと、なんとなく、よく見かける、普通の「癒し映画」の1本というイメージに変わっています。別に、南極じゃなくてもいいんじゃない? そんなとんでもなく遠いところじゃなくても良かったんじゃない?そんな風に感じます。

 だって、確かに隔離されてる場所での生活を描いてはいるけれど、こちらの持っているイメージや知識を越えるようなエピソードが余りなくて、かえって望んでやってきた無人島での、ほどほど厳しくほどほど楽しい生活みたいに、画面からは感じ取れるんだもん。

 哀歓がかなり薄い印象なんだよね。

 マイナス50度とか70度とか言ってるわりには、極寒も全く伝わってこなくて、のほほんと楽しく生活しているみたいに、私には見えてしまったんだもん。

 「今日、暑くない?」って、セリフがスベっているように聞こえてしまう。

 生活に慣れてしまうと、そんなものなのかもしれないけれど、観ているこちらには、「えっ、そんなものなの?」って思わせる温度差は伝わってこなくて、単に笑いを取ろうとしているように浮いている気がする。

 現実は、いちいちボヤいていても仕方ない、って気もしますが、ふと漂う男の哀感も呑み込んで生活しているようには・・・、感じなかったし。

 そこもまた「狙い」と言われたら、返す言葉はありませんが (^_^;)

南極料理人3.jpg


 主人公の堺雅人という役者さん、決して嫌いじゃないけれど、というか感じが良くて人が良さそうで、好感度で言えば決して低くないイメージがあります。

 でも、どこか、何を考えているかわからない、腹の底が見えないオーラを放っている役者さんでもあって、この作品での、人物描写のあっさり具合が、実はこの人の考えていることが一番わからないって、私に不信感を与えてたりしたんです。

 この仕事、基本、楽観的な人じゃないと勤まらない気がするんですが、それを感じさせるエピソードや演出がなかったように思います。

 で、娘の歯のエピソードが取って付けたように思えたのは、全体的な演出のコンセプトが、「淡々とした」映画路線に歩み寄りすぎていたからだと思います。そういう映画って、「お互いの心や絆は、言葉とか行動じゃないよ」の暗黙の了解のうえに成り立っているんで、反対にくどい描写は排除されるんだけれど、南極と日本との距離を絆で縮めるには、「淡々とした」描写の積み重ねだけでは、かなり難しい気もします。そうそう、距離感が映画に全くないんだよね、東京と襟裳岬ぐらいの感じかな。ここでは時間の流れが速いのか遅いのか、時間経過の描写も曖昧だったし。

 だから、映画と私の間には、どうしても空間が出来てしまって、まるで観光地の絵葉書を見ているみたいにも、感じさせたりしたのです。最初に出てくる俯瞰シーンからして、きっとCGなんだろうなあ、とか思ってしまったんで、ちょっとマズかったかもしれません。

南極料理人4.jpg


 それなりに、南極ならではらしいエピソードが綴られていて、笑いを誘うシーンもあるし、ホロっとさせるお話もあるんで、基本的には楽しい映画だとは思うんだけれどねえ。

 何なんだろう、後になって生まれてきた、映画に対する、この物足りなさは・・・。いっときは、美味しそうな料理でうまく誤魔化されたけれど、全体的なサービスというか配慮は、いただけなかったホテルに泊まった感じかな。

  どうせ主人公もアッサリ描くんなら、そういう話はKDD交換手とのエピソードのレベルぐらいまでバサッと削って、南極での生活が匂って来るぐらいまで、細かい生活描写を、丹念に積んで欲しかった気がします。


映画『南極料理


 でも、そう思ってしまう私には、それなりに理由があるんですよね。冒頭の脱走しようとしたメンバーを引きとめようとするシーン。

 マイナス50度とかの地だったら、現場で時間のかかる説得(たとえ10秒でも)はしないだろ、無理やりにでも強引に力ずくで連れ戻してから、説得するんじゃないかな。あんな場所では、それが鉄則なんじゃないかな、なんて素人ながら、思ってしまって、それがこの南極を舞台にした作品に、ウソっぽさを感じてしまったんですよね。映画としては、「掴み」が欲しかったんでしょうけれど。

 私には、あの説得も「遊び」というか、「コミュニケーション」の一部として楽しんでいたように思えました。実際、そうだったのかもしれないけれど・・・。

 で結局、ちょっと不便だけれど、なかなか普通では体験できない、リゾート地でのエピソードを見せてくれる「癒し映画」って、イメージに変わってしまったのかもしれません。

 すべてがアッサリ、寒さもアッサリの、"楽しく面白い" リゾート系癒し映画って、ことで、いかがでしょう。^_^;

 《 何か、とりとめのない、だらだらした感想になってしまいましたので、以下は追記ということで 》

 監督の意図ではないような気がするんですが、私はこの作品にとても懐かしさを感じました。

 「共同生活」っていうくくり、ではなくて、主人公以外の登場人物たちのたたずまいに、懐かしい何十年前の日本を感じました。

 それは、いくら喜劇ぽく、アッサリと映画を料理しても、拭いきれない原作から持ち込まれた「何か」なんだと、思います。ノーテンキに生活しているように見えて、みんな真剣に仕事をこなしているであろうことが窺われる「何か」。

 監督の演出の届かない部分で、原作から読み取った役者さんたちが、自然に発散させていたもの、それがアンサンブルとなって、この映画のアチコチから、醸し出されていたのではないかと思います。
タグ:堺雅人
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コメント 4

SOSEGON

最近ほんと多いですね。
癒し系ほのぼのアッサリ映画!
嫌いじゃないんですが、やっぱりだんだん飽きてきます。

なんかここらで、大作~!という大作を観たい気がします。
製作費ウン十億なんて邦画はないですかねぇ。

僕も堺 雅人さんは好きです。
何を考えてるかわからんてのは、すご~く感じます。
ま、そのフニャっとした笑顔や雰囲気が、
彼の魅力なんでしょうけど。

予告編を見ただけですけど、
けっこう“笑ってくださいオーラ”が出まくりですね。
南極、料理人・・・・
いかにも、映画らしい題材でいいと思います。

by SOSEGON (2009-10-13 05:27) 

丹下段平

想像を絶するだろう南極にいる割には、想像の範囲内な出来事しか描かれないので物足りなく思えました。それにあんな隔離された所に長い間居たら、もっと人間関係が煮詰まってくるようにも思えたのですが、あっさりでしたね。

僕も南極とは言いませんが、寒い土地に暮らしていると、冬にはちょっとの気温の上昇に「暖かさ」が感じられるものなんですよ。氷点下が当たり前の時期に0℃よりも上がると、思わず「あったかいね」って言ってしまいます。
by 丹下段平 (2009-10-14 01:39) 

よーじっく

最近、料理が最大の売り物みたいに扱われる癒し系映画が
多くて、私自身どこかで反発があるみたいです。

SOSEGON さん、こんばんはぁ(^^)/

この作品は、料理が主役なので、反発しても意味ないのにね。

堺 雅人さん自身は悪くないと思います。
日本でのとらえどころのない生活描写が、私の不安を煽った
感じはします。^_^;
by よーじっく (2009-10-14 21:10) 

よーじっく

南極体験の有る無しで、それぞれの人物描写はかなり変わってくると
思うのですが、それもアッサリしてましたね。

丹下段平さん、こんばんはぁ(^^)/

私は靜岡ですが、8月の32度より、9月の28度の方が
熱く感じます。誰でも経験していることを
敢えて、セリフで言わせたところに引っかかりました。

重箱の隅ツッコミで、恥ずかしいですが・・・。

by よーじっく (2009-10-14 21:20) 

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