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『副王家の一族』 (2009) [映画 (2010 鑑賞作品)]

副王家 チラシ031.jpgチェック:フェデリコ・デ・ロベルトの古典小説を原作に、政略結婚や遺産争いの愛憎と欲望、激動の時代の政治と迷信に翻弄(ほんろう)されるシチリアの名門貴族の姿を描く一大叙事詩。監督は『鯨の中のジョナ』のロベルト・ファエンツァ。イタリアのアカデミー賞、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で美術、衣装など計4部門を受賞している。“イタリア版「華麗なる一族」”ともいうべき肉親同士の愛憎図と絢爛(けんらん)豪華な映像世界に酔いしれられる一作。
ストーリー:ブルボン王朝下、イタリアへの統一を目前に控えた19世紀半ばのシチリア。かつてのスペイン副王の末裔である名門貴族ウツェダ家では、封建的な父ジャコモ(ランド・ブッツァンカ)と嫡男のコンサルヴォ(アレッサンドロ・プレツィオージ)が激しく対立していた。意のままに振る舞う父に、コンサルヴォは強い反発を覚えるが……
。   《 シネマトゥデイ 》 より

 どの角度から観てもヴィスコンティが映画化したかった、ってのが頷ける作品でした。で、別に、今更、誰かが映画にしなくても、とも思いました。

 確かにしっかりと堅実に創られている作品です。

副王家01.jpg けれど、ないものねだりを私はきっと、この作品を観ている間中、していたんだと思います。悲しいかな、限りなく、的外れの勘違いをしていたんだと思うのです。今、映画化する意味は、ただ一つヴィスコンティの視点ではない監督の手による、19世紀のシチリア貴族の物語なのです。

 もし、この原作をヴィスコンティが映画化したのなら、かなり印象の違う作品になっていただろうと思います。ヘタをすると、額縁をつけて、大切に名画コレクションの記憶の倉庫にしまいこんでしまったかもしれません。きっと原作が持つ強烈でプリミティブなテーマは、ヴィスコンティの魔術によって、口あたりのいい荘厳な歴史絵巻の中に呑み込まれてしまい、ある意味普遍的で壮大な映画として創られてしまったのではないかと思います。

副王家02.jpg 私はヴィスコンティの映画が好きです。初期の『揺れる大地』も渾身の傑作『ベニスに死す』も大好きです。だから、この作品にもヴィスコンティの影を求めてしまったんだと思います。けれど、この監督の切り口は、冷静で淡々としています。絢爛たる歴史絵巻を求めても無駄なのです。時代を写し出す美術も衣装も音楽も、確かに素晴らしいのですが、「貴族といえどもただの人間」という冷ややかな監督の視線を感じます。どこか、ネオリアリズモの作品を観ている錯覚さえ覚えます。

 この作品の中に、「愛」はありません。ロマンティックなできごともありません。ただあるのは「権力と、その永遠の維持」への情熱だけです。歴史を背負う覚悟のあるものだけが生き残れた時代のお話です。貴族たちがいかにして、自分たちの国を時代を歴史を創り出し、極力、戦争を避けながらバランスを保ってきたか、という秘密が描かれている作品なのです。

副王家03.jpg 真実とは醜いもの。現実とは情け容赦のないもの。悪も時として必要とされる時代があって、その上に成り立っていたのが、芸術だったりした時代。グノーの歌劇「ロミオとジュリエット」が、必要であった時代。

 
 監督ロベルト・ファエンツァによって、イタリアの片田舎シチリアの貴族でさえも、自らの一族を栄えさえ、守るために、当然のこととして行ってきた、普通のことを、ただ真摯に描いた、力作だと思います。

 共感できる人物が一人も登場しないことが、この作品の弱みだとしたら、それはそれで悲しい事のように思います。


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コメント 16

よーじっく

xml_xsl さん、こんぱんはぁ(^^)/

いつもご訪問とnice!、ありがとうございます。
嬉しいです。!!!
by よーじっく (2010-01-04 23:35) 

よーじっく

寅次郎 さん、こんぱんはぁ(^^)/

ご訪問とnice!、いつも嬉しいです。
ありがとうございます。m(__)m
by よーじっく (2010-01-04 23:36) 

よーじっく

はっこう さん、こんぱんはぁ(^^)/

ご訪問とnice!を、いつもありがとうございます。
感謝です。!!!
by よーじっく (2010-01-05 02:33) 

よーじっく

シンシン。 さん、こんぱんはぁ(^^)/

いつも、ご訪問とnice!をいただき
ありがとうございます。嬉しいです。m(__)m
by よーじっく (2010-01-05 02:34) 

miyoko

『山猫』は観たので、気になります・・^^
by miyoko (2010-01-05 11:20) 

アイスっこ

かなり、遅くなってしまいましたが、
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

「共感できる登場人物が一人もいない」って
ある意味、すごい映画ですね。
みてみたくなりました。
by アイスっこ (2010-01-05 16:48) 

よーじっく

MDISATOH さん、こんぱんはぁ(^^)/

ご訪問とnice!を、ありがとうございます。
嬉しいです。!!!
by よーじっく (2010-01-05 22:58) 

よーじっく

視覚的には、衣装や美術に見応えを
感じますが、ドラマとしての演出や展開に
物足りなさを感じることも確かです。

miyoko さん、こんぱんはぁ(^^)/
コメントとnice!を、ありがとうございます。

その点で、ちょっと微妙な作品です。(^^ゞ
by よーじっく (2010-01-05 23:04) 

よーじっく

@ミック さん、こんぱんはぁ(^^)/

いつもご訪問とnice!、ありがとうございます。
嬉しいです。!!!
by よーじっく (2010-01-05 23:04) 

よーじっく

久遠 さん、こんぱんはぁ(^^)/

ご訪問とnice!、いつも感謝です。
ありがとうございます。!!!
by よーじっく (2010-01-05 23:05) 

よーじっく

shin さん、こんぱんはぁ(^^)/

いつも、ご訪問とnice!をいただき
ありがとうございます。嬉しいです。m(__)m
by よーじっく (2010-01-05 23:06) 

よーじっく

きっと原作に忠実なのだとは思うのですが
もう少し、観ていて救いみたいなものが、
欲しかったですね。

アイスっこさん、こんぱんはぁ(^^)/
コメントとnice!を感謝です。

さすがに時間が長く
感じる作品でもあります。
by よーじっく (2010-01-05 23:09) 

よーじっく

mitu さん、こんぱんはぁ(^^)/

ご訪問とnice!を、いつもありがとうございます。
感謝です。!!!
by よーじっく (2010-01-05 23:10) 

Labyrinth

(^_^)ノこんばんは。

> 共感できる人物が一人も登場しない

_・)ぷっ ホントですね。そして、みんな不幸せな顔してるし?(苦笑)
でも、最後まで面白く拝見しました。
これだけあからさまに語られると、ほほ~ぅ と感心するばかりでしたけれど。f^_^;
by Labyrinth (2010-04-13 22:13) 

よーじっく

Labyrinth さん、こんぱんはぁ(^^)/
コメントとnice!をありがとうございます。

人間の愚かさや弱さ、悲しさの内面に肉薄した作品の方が、
共感は呼びやすいと思いますが、この作品の視点はかなり
冷静で客観的です。そして、その力強さが魅力の作品では
ないかともを感じます。

イタリアでも、こんな作品が創られているんだ、ってことに
驚いたり、感心したりの映画でした。


by よーじっく (2010-04-13 23:35) 

よーじっく

カラコン さん、こんにちはぁ(^_^)/
ご訪問とnice!をありがとうございます。感謝です。(^_^)
by よーじっく (2010-08-09 14:38) 

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