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映画 (2010 鑑賞作品) ブログトップ
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『悪人』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 作品として、良く出来ていると思う。

 行きずりの二人の逃避行がメインの映画なんだけど、何故か主人公の祖母や被害者の父親の姿が、脳裏に焼きついている。きっと映画の意図は、そこら辺にあるんだろうと思う。

 殺人犯のラブ・ストーリーは、それほど印象に残る描かれ方はしていなくて、一種の社会派ドラマとして、出来上がっている。

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 「悪人」とは、何なのか、「悪人」の定義とは?といったメッセージが色濃く作品に影を落としていて、作品のバランスを崩している・・・、

 などと、私は感じてしまったのだけれど。実は、とても、その微妙なバランスの崩れ具合が、この作品の立ち位置を際立たせているとも、解釈できる。

 全ての人間が主人公であって、脇役であって、という成り立ちのうえで社会が動いている以上、悪人もまた、誰でもがなり得るし、見えない部分で悪事を働く者もいる。苛立たしさと諦めの・・・、それでもと・・・、作品が訴えてくる。

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 主人公二人の内面や背景の描写を、敢えて控えめに演出した作品なので、二人の逃避行が唐突にさえ感じられる。ハッキリ言ってしまうと、この二人に関しては、心の動き(閉塞感や苛立たしさ、やるせなさ)までは、描ききれていない気がする。

 にもかかわらず、そのポッカリ空いた映画の隙間が、余り気にならないのは妻夫木聡も 深津絵里も良い演技をしているからであって、二人の芝居に助けられているようにも窺える。

 残念なのは、同じように淡々と描いていても、樹木希林や柄本明の存在感が目立ちすぎている事。監督が意図していなくても、焦点がそちら寄りになっている感じすらある。

 監督が目指したものは、また別の次元にあって、たくさんの登場人物たちの思いが錯綜しながら、混沌と時間が流れていく社会の一面を、見せ付ける作品になっているところを、興味深いと解釈すべきなのかもしれない。

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 ちなみに、作品の冒頭の雰囲気は、ちょっと昔のフランス映画ぽくて、シャレてて面白いと思った。ただ 久石譲の音楽は、その路線(逃避行)でお話が進んでいくだけなら納得もするのだけれど、映画が全く違う拡げ方をしていくので、ハッキリ言ってウルサイだけだった。それが、この作品の一番惜しいところかな。

・・・ 『悪人』 概要と予告編を見る


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『(500)日のサマー』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 日付が行ったり来たりしながら、エピソードが行ったり来たりしながら、それでも映画は恋愛が始まって終わっちゃうまでの様を描いているんで、不思議と面白く観ることが出来ました。

 日付をシャッフルしているのは、監督さん?、それとも主人公のトム?

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 サマーちゃんを、恋愛の対象として、ちょっと距離を置いて思い続ける位置で描かれているところが、切ないんだよなあ。別に片思いじゃないんだけれど、殆ど片思いと変わらないトム君の心の中が、見え隠れするのは、一度過去として捉えた上で、振り返るみたいに、お話を進めていく監督さんの視点のせいなのかもしれない。

 実はサマーちゃんは、どんな女の子なのか、イマイチわからない。ちょっと個性的、でも普通のはず・・・。まっ、とりあえずは、魅力的なんだけどね。

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 妄想やらなにやらが、どんどん先走っちゃうトム君は、考えてみれば、これまた誰でも経験ある恋愛と殆ど同じ道を歩んでいただけなんだよなあ。

 監督さんが、そんな500日の日々を、その痛みも喜びも、面白おかしく、いや、暖かいまなざしで、楽しい思い出として綴っているんで、何故かホンワカ、観ているほうも優しくなっちゃうんだよね。

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 作品としては、特別な事はしていないんだけど、適度に映画を遊んでいる感覚が、不思議とここちいい。

 映像とか音楽とか、ほど良く観客をくすぐってくる微妙でステキな個性。やっぱり、そのとてもいいバランスの、ちょっとだけ個性的な部分が、この映画の最大の魅力なのかもしれない。

 この曲、ネリー・ファータドぽくて好きです → Regina Spektor - "Us" [OFFICIAL video]
YouTube で「500 Days Of Summer (2009) Soundtrack」 と検索すると、サントラ全曲聴けるぐらい、たくさんの楽曲がアップされてます。(^_-)-☆
 こちらも印象的でした → Sweet Disposition - The Temper Trap

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 そういえば、この肌触りのいいチープ感って、アメリカぽくなくて、好きです。(^_^)v

 ( 実は今年の4月に観た作品です。う~ん、半年経ってから感想を載せるなんて、マイペースすぎるなぁと自分でも呆れます。(^^ゞ )

・・・ 『(500)日のサマー』 概要と予告編を見る


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『ガールフレンド・エクスペリエンス』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 観た直後の素直な感想は、あれ?、何の映画を観てたんだっけ?

 さりげなく始まって、淡々とお話は流れていき、気が付くと終わっていたって感じ。

 あっけなく、何も起こらずに日常の中に出来事は埋没していく、何も特別な事なんか起こらない、いや起こったとしても、ただ時間が経っていくだけ。生きていくって、そんなものなのかもしれない、・・・という監督の醒めた目線。

 いや、本当はそうじゃないのに、そう見えてしまうんだよなあ。監督の登場人物たちへの距離の置き方が、私みたいな勘違いを引き起こすんだよなあ。

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 この映画の出発点は、あのラストじゃないのかと思う。あのラストからカメラを引いていくと、見えてくるもの。それを、一定の距離を保ちつつ綴っていくと、こんな作品が出来てしまうような気がする。

 情熱さえも、人間の思いの熱さえも奪い去ってしまいかねない距離感。実は、一度諦めたはずのものを、もう一度見直そうとする、生への(性とは限らない)、慈しみに溢れた視線は、ラストへと集約されるはずなのに・・・。

 ラストが一種のオチというか、逃げに見えてしまう、そんな悲しさ。

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 政治の話とか、経済の話とか、何故か何もかもがビジネスみたいに会話が交わされていて、空しさしか伝わってこない虚ろな空間の人間の物語を、装ってはいるんだけれど・・・。

 監督の苛立たしさと諦めにコーティングされた、スタイリッシュな個人映画って、ところなのかなあ。私が無理して掬い取ってる気もしないわけではないんだけれど・・。(^^ゞ

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 時代の断片を、鋭利なナイフで切り取ってみました的な、作品だとしたら、かなり旬は過ぎている気がします。舞台は数年前のニューヨークなのに、何故か5、6年前のお話を見ている感じがする。その点では、「惜しい!」というべき作品なんだろうなぁ。

・・・ 『ガールフレンド・エクスペリエンス』 概要と予告編を見る


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『ブライト・スター ~いちばん美しい恋の詩』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 いかにも古めかしいイギリス映画の質感が、何故か懐かしく、そして心地よく、感じられる作品だった。この年代を描いたイギリス映画は、どの作品でも一貫して共通した手触りみたいなのがあって、いつも感心する。

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 そして、『ブライト・スター ~いちばん美しい恋の詩』もまた、じと~としてたり、土臭かったり、部屋の中も、表玄関も、路地裏も、小さな庭も、野原や森も、画面の微妙な明度が維持されていて感心してしまう。

 これは監督というより、撮影や照明や美術などのスタッフが、共通した認識をもっているからこそ、生み出されるものなのかもしれないし、しっかりとその認識がスタッフに受け継がれてきている証明なのかもしれない。

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 詩人ジョン・キーツの恋愛と生涯を描いた作品なんだけど、演出の手触りが、とても繊細で惚れ惚れしてしまう。画面から発散される、映画の持つ空気感が、素晴らしい。

 しっかりしたスタッフたちの創り出す土台の上で、その細やかで、密やかで、いじらしいまでの、主人公たちの恋愛の皮膚感は、映画が話を伝える媒体であると同時に、登場人物の生きていた一瞬の息遣いを、画面から発散させ、観客と共有させようと意識して創られている気がする。私は、監督の意図しようとした「永遠と勘違いしてしまう時間(とき)の止まった、美しい空間」に、切なくなってしまった。

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 確かに、物語は進展して詩人キーツの短い生涯が閉じるときまで描かれているんだけれど、私には凝縮された濃密な恋愛の瞬間の至福を、描くためだけに存在している映画のようにさえ思う。

 映画中盤で、数分だけ繰り広げられる、恋愛の至福の瞬間の描写は、セリフも動きも殆どないにもかかわらず、映像だけが持ちえる「魔法の一瞬」なのではないかと、感じられた。

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 それだけで、私はこの映画に満足してしまった。


・・・『ブライト・スター ~いちばん美しい恋の詩』 概要と予告編を見る


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『抱擁のかけら』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 観ていて、映画館ごと20年くらいタイムスリップさせられたような感覚を覚えた作品だった。

 実際、私はシネコンで観たんだけれど、20年位前のどこかの名画座で観ている錯覚に陥った。私は映画館ごと、あの時代に引き戻されていた気がする。そのとき、すでにこの『抱擁のかけら』は名作として存在していて、私は過去の名作鑑賞を楽しみに映画館へ足を運んでいた、そんな感じだったりする。

 とにかく、映画として、しっかり出来ていて、堂々としすぎていて、有無を言わせぬ力で、遥か昔に私を引き戻そうとする、監督の情熱は、実は悲しいくらいに古臭さかったりするんだけれど・・・。女優、監督、映画の世界が舞台に描かれている。そうやっぱり、かなり古臭いハリウッドの女優映画の雰囲気を持つ映画なんだよね。

 リスペクトというか、オマージュに溢れていて、暗喩に満ちていて、映画ファンの心を擽る創りになっているところが、心憎いんだけど・・・・ね。

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 で・・、いまさら何?、みたいに思っちゃう私は、かなりの天邪鬼なんだろうなあ。

 女優を楽しむ映画であり、演出を楽しむ映画であり、映画の存在そのものを楽しむ作品なんだろうと思う。自己満足・・・、リスペクト・・・、オマージュ・・・、力のある監督だからこそ、映画人の遊びが作品に昇華されてて、しっかりとまとまって、ちゃんとした映画になっちゃっている。

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 映画館で映画を楽しんでいる自分を、客観的に楽しんでいる自分が、そこにいて、映画を創る事を楽しんでいる、監督の姿を想像しながら、とっても冷めた目で、映画を観ている自分を楽しんでいる。

 この作品を観ていると、映画って、とっても遠い存在なんだって、思い知らされる気がする。前時代的な、監督と女優の物語。そんな映画が、「今」創られて、今観ている私。

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 「映画を楽しむこと」を楽しむ見方しか出来ない事が、ホントは歯がゆくて、悔しくて、素直に映画に入り込めない自分が、本当はとってももったいない見方をしていることが悲しくなる。『抱擁のかけら』は、そんな作品だった。20年ぐらい前に、観たかった映画なのかもしれない。

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 この作品には映画への愛が迸っていて、とんでもないパワーでそれを私に見せつけてくる。「今」だからこそ、観るべき映画なのか、その感覚の古さを楽しむべきなのか。映画と言う迷路から抜け出せないのは、私なのか監督なのか・・。その居心地のよさに、何故か違和感を覚えてしまう作品なんだよなあ。


・・・ 『抱擁のかけら』 概要と予告編を見る


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『SR サイタマノラッパー』 (2009) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 この映画、ラストが最高にクール!でした。

 特別な事なんか何にもしていないし、凝ってもいない。劇的なラストでもない。バサッと、ブッちぎられたみたいな、素っ気ないラスト。だから、ラストそのものには期待しないで欲しいんだけど・・・。

 監督の主人公に対する突き放し方が最高に、優しくて暖かくて、その気持ちが伝わってくる終わり方。やっぱ、どうみても、監督はクール!なんだよなあ。

SRサイタマノラッパー2.jpg オチコポレ野郎の、不甲斐なくて情けなくて哀れな青春。いやいや、まだまだ映画になんて出来ないくらいに、何もなくて呆れるくらいにくだらない、ただ足踏みしているだけの、1歩たりとも前に進んでいない、もうちょっとで、青春とやらの入り口に片足ぐらいは突っ込めるかな、みたいな腑抜け野郎の、それでも青春なんだよね・・・的な青春映画、なんです。

 とりあえず、ヒップホップというか、ラッパーでの成功を夢見るヤツのお話なんだけど、あんまり、ヒップホップとかラッパーとか、作品の土台は関係ない感じもしないわけではない。ガンガン全編に、そういう音楽が流れていて、前面に押し出されているわけでもないんで・・・。

 まっ、とにかく、演出も構成も、お話の進行も、とても素直で、ドンくさいくらいに真面目で誠実な、それでも何故かちゃんと、映画だったりする作品。

 全く関係ないような、関係あるような、微妙なんだけれど何故か、あの「にっかつ」の後期青春映画(含・日活ロマンポルノ) の雰囲気が感じられたりする。そういう路線の作品ではないけれど、創ろうと思えば、そういう路線でも創れそうだったりして・・・(オイオイ)。 また、それは別の話なんだけどね。(^^ゞ


SRサイタマノラッパー3.jpg 主人公の足踏み感、それがこの作品の見どころ。いじらしくて、いじましくて、どーでもいいような、そんなありきたりなヤツの、焦燥感充満の青春とやらをご覧あれ・・・、みたいな~。

 なんとも清々しくて、つい、その苛立たしい生き方に、肩入れしたくなっちゃう、可愛らしい作品でした。そうそう、映画っぽくないとこなんか、一時期の瑞々しいATG作品のオチコボレ作を思い起こさせたりして、ちょっと個人的にはノスタルジックに感じたことも、確かです。

 精一杯、私としては褒めているつもりです。無視してもいい作品なのかもしれないけれど、私は無視できない魅力を感じました。(^_^)

 

・・・ 『SR サイタマノラッパー』 概要と予告編を見る


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『プレシャス』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 とても悲惨な境遇に育った黒人の少女の、重くて暗いお話なんだけれど、監督の視線は暖かく、どんなに辛いエピソードが繰り返されても、希望の光を感じさせるような演出が施されている素晴らしい作品。

180 12284318_gal.jpg 特に前半は、彼女の置かれた環境を描いているので観ていて辛くなるのだが、随所に挿入される主人公プレシャスの妄想シーンが、この上もなく、軽くてノーテンキで、つい微笑ましく感じてしまう。

 あの突然登場する、煌びやかでちょっと滑稽な妄想シーンは、この作品を最後まで観て欲しいという監督の思いがあらわれていると同時に、プレシャスが現実に耐えて生きていくために作り出した、もう一つの彼女だけの救いの世界であって、その妄想があったからこそ、なんとか現実の世界に踏みとどまっていられたのではないかと考えると、なおさらに彼女の、恐ろしく救いのない境遇に驚かされる。

180 12284317_gal.jpg 後半は、そんな彼女が、重い現実を跳ね除けて、一歩でも前に進もうとする姿を描いていくのだけれど、そこからは、前半とは打って変って、丁寧で細やかな描写で綴られていくところも、好感が持てる。

 マライア・キャリーやレニー・クラヴィッツなど、華やかなイメージのスターたちが、えっ?これがあのマライアなの?みたいな、飾らない姿で、それぞれの役を演じていて、作品の誠実さを印象付ける演出になっているところも面白い。

180 11744630_gal.jpg プレシャスをサポートしようとする周りの人たちの、生き方や思いは、そのサポートを押し付けようという視線ではなく、彼らが生きている姿を見て感じて、プレシャスのこころが、社会や将来に対して、自然に希望を持てるようになってくれればという心遣いのうえで行動しているので、清々しくさえ感じられるんだと思う。

 プレシャスが、囚われていた現実から解放されるには、まず本人のこころが自由でなければ何も始まらないと気付かせてくれる、登場人物たちの自然な姿が、何よりも私には魅力的に感じられた。

 今年、観た映画の中でも、特に印象に残る素晴らしい作品でした。個人的にはオススメの作品です。


・・・『プレシャス』 概要と予告編を見る


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『クレイジー・ハート』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 こんなお話って、どこかで見たような読んだような、そんな気がしちゃうんだけど・・・・。

 かつての栄光とは裏腹に、今は自堕落な生活とでも言えそうな日々を送るカントリー歌手が主人公。彼には、かつて自作してヒットした名曲が数多くあり、地方の場末のバーやボーリング場のステージでの巡業の毎日が続く。

 どうも新曲の創作はスランプらしいのだけれど、さもありなんの自暴自棄の日々なんだよね。

160 100323_crazyheart_sub1.jpg で、縁あって知り会った地方の新聞記者の、子持ち女性との恋愛を経て、自らの再生へと意識を変えていく姿が描かれている・・・、というところがこの作品の大筋って事です。


 こういった、自らの意志とは別に、名曲を創れちゃう人って、その自分の特別さに気付けない限り、悲惨な方向に行きやすいんだよね。才能に食いつぶされちゃう人なんだと思う。

 そう、才能はかなりある人らしいんで、必要なのはその意欲だけなんだよね。

 意欲喪失の原因も、くだらないくらいに後ろ向きみたいだし、意欲復活の原因も恋愛ってことだし、遅かれ早かれ、彼は死なない限り、次の新しい名曲を生み出したんじゃないかと、思ってしまったりもする。

180 12583159_gal.jpg だから、お話に感動なんか出来なかったりするんだけれど・・・。でも、不思議と酔える作品に仕上がっているところが、信じられないくらいに素晴らしい。


 まっ、とにかく、この映画って、歌われる曲が、とんでもなくいい曲ばっかりなんだよねぇ。

 とりあえず栄光のヒット曲をたくさん持っているカントリー歌手という設定なんで、流れてくる曲がイマイチだったら、お話にも何にもならないんだけれど、説得力あるいい曲なんだよなあ。みんなオリジナルらしいけど、何とも凄い!!!。

 さらに、主人公を演じるジェフ・ブリッジスが、その主人公のヒット曲を自ら歌っているんだけれど、これがまた、いかにも往年の大歌手にふさわしく、渋くてメチャ味があるんだよねえ。やっぱ、この人ってホントはいい人なんだよなあ、と思わせるショーへの姿勢と歌声。疲れた人生を滲ませる、歌いっぷりの見事さ!。やられたぁ~、って感じです。どうみても、役者さんの付け焼刃とは思えない魅力に溢れている歌唱で、呆れる程に素晴らしい。

180 13098252_gal.jpg 他に、彼のかつての弟子であり、今は現役のスター歌手役のコリン・ファレルも、実際歌っているみたいなんだけど、これがまた、いかにも、イマイチ深みはないけれど、キャッチーで魅力的な歌唱を披露してくれて驚いてしまう。やっぱ、この映画の「芯」は、ブレてはいなくて堂々としていて、凄みさえ漂ってきます。

 それに、ジェフ・ブリッジスが、アカデミー賞主演男優賞を受賞したのは当然と思える演技。この映画の中にいるのはどう見ても、主人公バッド・ブレイク以外の何者でもなくて、一瞬たりともジェフ・ブリッジズを私に意識させることはなかった。演技に見えない自然体の存在感は、違和感のかけらもなかった。

 ダメ中年の色気って、こういうことなのかぁ、と勉強になります。まっ、根本的に器が違うけどね。(^_^;)


 そう、この映画ってもしかしたら、映画そのものに酔えるんじゃなくて、音楽に酔える、極上のプロモーション・ビデオ長尺版なのかもしれない・・・。まっ、そんなわけないけどね。

160 336060_007.jpg ここまで酔わせてくれるなら、私は『クレイジー・ハート』を立派な1本の映画と呼んでも、一向に差し支えないと思います。

 ちなみに、私はカントリー・ミュージックと呼ばれる音楽が大好きなので、この音楽に誰でも酔えるとは断言できないところが、ちょっと辛い映画・・・。誰が聴いても良い!、と信じてますが・・・。


 とはいえ、演出も映像もとても良かったです。南部の美しい自然が、これを撮影しないで、どうするんだ!ってくらいにキレイでした。あの風景があってこその作品という気さえします。

 そして、全てが誠実な映画という気がするんだよね。細かい部分まで、演出に気配りが行き届いている。極力奇を衒ったものを排除しているので、余りに当たり前で淡々としすぎちゃうんだけれど、結局、カントリーとか南部への想いが、この作品の誠実なアプローチをコントロールしているんだと思う。

 そういえば、悪いヤツが全く出てこない・・・、というより考えられないくらいに「いい人」ばっかり。マギー・ギレンホール演じる恋人は当然として、心底良いヤツのコリン・ファレルを筆頭に、マネージャーもなんだかんだ言っても主人公を信じているし、恋人の息子だって、とってもいい子だし・・。

160 12583162_gal.jpg 後半に出てくるローバート・デュヴァルとのエピソードに至っては、こちらが腰砕けしてしまうほどにお決まりの、男同士の友情万歳!、って感じなんだよなあ。

 実は、製作のクレジットにロバート・デュヴァルの名前を最初に見たとき、絶対出てくるはずだと何故か確信しちゃったんだけど、とんでもなく憎らしいくらいのタイミングで登場するんで、予定調和にフニャフニャと、もうどうでもしてくれ!みたいな気持ちになっちゃったんだよね。

 とにかくどこまでもお約束の、マンネリ万歳の展開に、反対に嬉しくなっちゃうんだよねぇ。ここまで、「いい人」を周りに揃えりゃ、主人公じゃなくたって、心は前を向くんじゃないかなあ、とチクリと言いたくなるほど、羨ましいです。心の暖かい人ばっかりで、まるで寅さん映画みたい。(^^ゞ

 だから、お話そのものが、とてつもなくぬるま湯(オイオイ ! ) のハッピー大盛りの南部どんぶりでも、許せちゃうんだよね。そう、この南部どんぶりが、憎らしいくらいに旨いんだよなあ。(^_^)v

 まっ、いつのまにやら、国境を越えた人情噺の世界に酔わされちゃったって、次第です。
(^_-)-☆


・・・ 『クレイジー・ハート』 概要と予告編を見る


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『瞬 またたき』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 北川景子を観に行く映画になっちゃってます。別に、それでいいんだけれど・・・。(^^ゞ

 お話は、概要を見ていただくとして、時間が経てば経つほど、どんな作品だったか怪しくなってきてしまって、やっぱり北川景子しか覚えていない・・・。それでいい作品になんだと思ったりもする・・・。

500 瞬 またたき4.jpg ちょっとサスペンスというか、謎解きぽい展開をする作品なんですが、余り謎解きの要素を生かそうという意志は、この映画にはないみたいなんですね。

 それなりに映画を面白くするであろう材料は用意されてるんだけれど、どの方面でも詰めが甘くて、中途半端に、時間を繋ぐためだけに、エピソードが語られていく雰囲気があります。

 つまるところ、純愛という方向で、お話を最後まで引っ張っていこうとしているので、最終的には「涙」を観客に期待しているんだろうとは思うけれど、やっぱり、無理やり泣かされてしまう感じがあります。

500 瞬 またたき3.jpg 私は残念ながら涙は出てきませんでしたが、中には泣かされた人もいたと思います。でも、それでOKとは思えない、作品としての煮え切らなさ、構成の甘さ、展開のぎこちなさを感じました。

 今という時間の、北川景子を映像に焼き付けた作品にしては、物足りなさを感じます。 『花のあと』が良かっただけに、惜しい気がします。


・・・ 『瞬 またたき』 概要と予告編を見る


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『さんかく』 (2010) [映画 (2010 鑑賞作品)]

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 冒頭、とってもいやらしい視線で、登場実物の一人・中学生の桃を嘗め回すカメラ・ワーク。電車でのシーンです。とんでもない映画かもしれないと、心配になったのは確か・・・。

 三角関係のラヴ・コメなんだろうと、たかをくくっていたけれど、いやはや、監督さん、とってもいやらしいです。いえいえ、中学生の桃ちゃんを見る視線じゃなくて、人間を見る視線が・・・です。

180 336066_003.jpg 三角関係といっても、ラヴ・コメ特有の軽さはなくて、どんどん重くなっていって、どんどん観ているのが辛くなっていきます。

 だからと言って深くはないんだけれど、それが人間かも~、なんて思わせます。重くて浅い、男女の関係です。

 登場人物3人を見ていると、全員ストーカーじゃん、と思います。

 でも、恋愛関係って、お互いが許しあえるストーカー体質の微妙なバランスで成り立っているわけで、少しでもズレてくると、この映画の3人となんら変わらない進展を見せるもののように思います。

180 336066_006.jpg ダメ男にダメ女、同棲している恋人同士。

 無邪気で無防備で、わがままで無神経な女子中学生に、簡単にバランスを崩されてしまうような、それが、よくある恋愛なのかもしれません。

 あやふやで、危うくて、でも、その微妙なバランスの上に成立している恋愛を、運命の・・とか、世界でたった一つの・・とか、の思い込みこそが、とっても素晴らしいんだよなあ~。

 と、開き直って・・、いや、愛を込めて、温かい目で見守っている監督さんの、ストーカーちっくな視線を感じます。

180 336066_005.jpg 転げ落ちるように泥沼に嵌っていく、他人から見れば悲惨な重くて辛い恋愛を描いてはいるけれど、観終わった後、何故か得もいえぬ爽やかささえ感じます。ダメ男もダメ女も、自分の思いに躊躇しないところが素晴らしいです。

 理性が働いて、なかなかここまで思い切った行動が取れないのが、人間かもしれないですが、心の中じゃ、妄想しているかもしれない。

 そう思うと、なんて可愛い二人だろうと思います。成長しないのも、一つの立派な生き方かも、なんて思わせてくれる作品でした。

 吉田恵輔監督は、今回は、『純喫茶磯辺』ほど間口を広げなかったのが、作品として成功した一因のように思います。

 不思議に爽やかで、清々しくも、重~い、恋愛映画でした。


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